景観照明についての技術

技術資料・関連法規

都市は日々成長しつづけています。再開発が進み、新しい商業エリア・住宅地が誕生するなかで、これまでの機能中心の都市から、多様な精神的・文化的豊かさへの要求が増大するにつれアメニテイ・個性等を重視する“ゆとりとうるおいのある都市空間” が求められるようになりました。

さらに、夜間の活動時間の増大により、24時間動きつづける成熟した都市空間では、照明も街づくりの重要な要素です。単に安全性・機能性だけでなく都市のめざす方向・街づくりのパフォーマーとして“都市のあかり”が存在します。

GSユアサでは、人と街、人と光の調和を求めて都市空間を4つの大きなゾーンに分けて考えました。都市のもつさまざまな顔・その個性と機能をもっとも引きたてる照明を提案します。

景観照明のゾーン分類

  • PUBLIC ZONE(パブリックゾーン)

    パブリックゾーン

    眠らない街の出現で、昼夜の人々の憩いの場として公園や緑地の機能がさらに重要視される中、より確かな安全性と雰囲気の演出効果がその照明に求められています。

    対象施設

    • 文化施設(美術館・博物館・図書館等)
    • スポーツ施設
    • 公園・遊園地

    照明のポイント

    • 憩いの場として自然を引きたたせ、景観をより美しくみせる。
    • 夜間の安全・防犯に必要な明るさ。
    • 全体の造園計画・施設計画にマッチした統一感のある器具選定。

    照度の目安

    文化施設

    • 市民広場 7~15 lx
    • 場内広場 15~30 lx
    • アプローチ 30~70 lx

    公園

    • 公園全般 7~15 lx
    • アプローチ 15~30 lx
    • 遊歩道 7~15 lx
    • 駐車場 3~7 lx
  • LIFE ZONE(ライフゾーン)

    ライフゾーン

    高齢化社会や景観問題に対応して、住宅街やニュータウンのゾーン照明には、高い防犯効果などの安全性と周囲の環境との調和がより一層求められています。

    対象施設

    • 外周道路
    • 通路・アプローチ
    • 広場

    照明のポイント

    • 防犯や安全のためだけでなく昼間の景観を考え周囲環境との調和を図った器具デザインの選定。
    • 住宅への光洩れを考慮した器具。

    照度の目安

    • 外周道路 7~15lx
    • 通路 1~10lx
    • アプローチ 1~10lx
    • 広場 1~10lx
  • OFFICE ZONE(オフィスゾーン)

    オフィスゾーン

    ビジネスの24時間体制化が進行するオフィス街などのビジネスゾーンでは、より知的でシャープなイメージと安全や安らぎを与える光が求められています。

    対象施設

    • ビルの周辺道路
    • 歩道及びアプローチ

    照明のポイント

    • ビルの周辺道路は車の運行をスムーズにするような機能照明を。
    • 歩道及びアプローチは通行の安全性を確認する明るさ。
    • 建物・樹木等環境との調和を考えた器具デザイン。
    • 建物や樹木のライトアップの計画。

    照度の目安

    • ビル周辺道路 7~15lx
    • アプローチ 15~30lx
    • 庭園 3~5lx
    • 駐車場 7~15lx
  • ACCESS ZONE(アクセスゾーン)

    アクセスゾーン

    駅前やターミナルなどの都市の玄関口は、常に生き生きとした都市の表情を映しだします。アクセスゾーンの照明は都市の光のシンボルとも言えます。

    対象施設

    • 駅前広場
    • 駅前大通り
    • 商店街・モール
    • 道路

    照明のポイント

    • 駅前広場はハイポール灯により広場全体の明るさの確保と誘導性をもたせる。
    • 灯具のデザインの統一とシンボリックなデザイン。
    • 保守の容易さ。
    • 深夜の交通量に合わせた減光・調光方式の採用。
    • 買物客の誘導を考えた照明灯配置。
    • スムーズな通行が可能な明るさ。
    • 快適な雰囲気づくり。
    • 店舗並びに他の構成物との調和を考えたデザイン。

    照度の目安

    • 駅前広場 30~150lx
    • 駅前大通り 30~100lx
    • アーケード商店街  100~750lx
    • 一般商店街 10~100lx
    • 地下商店街 150~1000lx
    • 駐車場 7~15lx
    • 地下連絡通路 75~500lx

照明プラン作成の手順

1.照明イメージ・コンセプトの設定

パブリック・ライフ・オフィス・アクセス・ベイエリアなど各ゾーンの立地や環境条件を考慮しながら、全体のイメージコンセプトを立てます。トータルイメージとしては、アクティブ・アメニティ・アミューズメントなどが考えられます。それらをもとにライティングコンセプト(シック・シンプル・カラフル・賑やか・落ち着きなど)を決定します。

照明イメージ・コンセプトの設定

2.灯具高さとレイアウトの設定

灯具高さとレイアウトは、夜間はもちろん昼間においても、周辺の景観や環境と調和していることが大切です。

灯具高さとレイアウトの設定
  • ハイポール照明

    • 広場全体の照度を確保すると同時に、広場のシンボルとして機能します。ポールの乱立を防ぎ、風景との調和も図れます。
    • 効率の良い、経済的な照明ができ、メンテナンスも昇降装置を使用すれば容易にできます。
  • 高位置照明(高さ4m~12m)

    • 比較的大きな通路に路面の明るさを確保するために配置します。配置によって空間の明るさも確保し、スムーズな交通を助けます。
    • 風景にマッチしたデザインを採用し、その場所のイメージを形成します。
  • 中位置照明(高さ1m~4m)

    • 公園などのパブリックスペースの沿路などに配置します。低い位置からの照明で、空間のアクセントとして機能します。
    • 人の目につきやすいので、デザインも考慮し、風景との調和を図ることが重要です。
  • フットライト・埋込み照明(高さ1m以下)

    • 公園などに配置し、景観のアクセントとして機能します。低位置からの照明でおちつきとやすらぎを演出します。
    • 通行人の誘導性を高め、スムーズな人の流れを創ります。
    • メンテナンスが容易に行えます。

3.明るさの設定

JISでは各ゾーンごとに下表の値を推奨しています。

通路・広場・公園・駐車場の照度基準(JIS Z 9110)

JISの照度基準は、従来の1979年版から、国内外の社会的、経済的及び技術的な進展に対応するため、2011年5月に改正されました。今回の改正は、従来の推奨照度だけを規定した照度基準から、それらに照度均斉度、不快グレア、演色評価数などの照明の質的要件を加えるとともに、分野毎の個別の照明基準を包括し、それらとの整合をとることを目的としています。照度基準の詳細については、JIS照度基準を参照してください。

歩行者に対する道路照明の基準(JIS Z 9111)

夜間の歩行者交通量 地域 照度(lx)
水平面平均照度 鉛直面最小照度(H=1.5m)
交通量の多い道路 住宅地域 5 1
商業地域 20 4
交通量の少ない道路 住宅地域 3 0.5
商業地域 10 2

4.灯具デザインと配光の選定

配光は灯具のデザインとともに重要な要素です。それぞれのゾーンに合った灯具デザイン・配光を選定してください。

街路器具の主な配光形式

配光形式 配光の特徴 代表的な形状
タイプA
全方向拡散型
発光部分が直接見えるため明るさ感が高く、空間全体を明るく照らす配光です。路面の明るさより、空間の華やかさや賑わいを必要とする商店街や駅前広場などに適しています。
タイプA
タイプB
全方向拡散/後方カット型
タイプAの後方への光をカットした配光です。空間全体を明るくし、且つ民家や田畑等が隣接し遮光が必要な場所に適しています。
タイプB
タイプC
下方向主体型
タイプAに比べて上方向の光を抑えた下方向主体の配光です。空間全体を明るくし、路面の照明効果も得ることができます。様々なデザインが揃っていますので、公園、街路、広場などそれぞれのイメージにあった灯具を選択できます。
タイプC
タイプD
下方向主体/後方カット型
タイプCの後方への光をカットした配光です。空間全体を明るくし、且つ民家や田畑等が隣接し遮光が必要な場所に適しています。
タイプD
タイプE
下方向主体型
横方向から発光部分が全く見えず、路面を効率よく照明する配光です。周囲への光の影響が非常に少ないため、住宅街や自然公園などに適しています。
タイプE
タイプF
下方向主体/後方カット(前方照射)型
タイプEの後方への光をカットした配光、または前方向へ光を照射する配光です。駐車場や広場などのエリア照明や、後方に遮光が必要な場所の照明に適しています。
タイプF

5.ランプの選定

多種多様な光源のなかで屋外照明に最も利用されているのがHIDランプです。それぞれの光源の持つ光色、演色性、効率などの特長を生かして選定してください。

ランプの種類 光色 用途
色の概略表現 色の感じ
エコセラ
(セラミックメタルハライドランプ)
白色
電球色
さわやかな感じ
暖かい感じ
全般的に利用
(広場・公園・緑地・ターミナル広場・街路)
水銀ランプ 蛍光水銀ランプ 白色 さわやかな感じ 全般的に利用
(広場・公園・緑地・ターミナル広場・街路)
バラストレス水銀ランプ 電球に近い白色 やや暖かい感じ 公園・花だん・植込み
メタルハライドランプ L形メタルハライドランプ 白色 さわやかな感じ 全般的に利用
(広場・公園・緑地・ターミナル広場・街路)
SC形メタルハライドランプ 白色 さわやかな感じ 全般的に利用
(広場・公園・緑地・ターミナル広場・街路)
細管形メタルハライドランプ
コンパクトメタルハライドランプ
白色 さわやかな感じ 花だん・植込み・広場・ライトアップ
高圧ナトリウムランプ L形高圧ナトリウムランプ 黄白色 - 街路・広場・駐車場
高演色形高圧ナトリウムランプ
(サンカラート)
黄白色 暖かい感じ 商店街・商業施設

6.照明計算、照度チェック

照明のイメージが完成すれば、適合する配光形式をもつ器具・ランプを想定し、右式により所要灯数を試算します。計算灯数で照明効果を考えながら照明灯を配置し照度分布が所要の値を満足しているかを、プラン内容から再チェックします。

照度が不足している場合は、光源の大きさ・灯数・設置間隔・取付高さ・配光形式などを変更してください。

照明計算の式
  • N=所要灯数
  • E=平均照度(lx)
  • A=被照面積(m2
  • F=ランプ光束(lm)
  • U=照明率
  • M=保守率

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